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生前贈与についてよくある失敗例

  • 文責:税理士 岩崎友哉
  • 最終更新日:2023年9月8日

1 生前贈与について

生前贈与とは、被相続人が生前に相続人や第三者とする贈与契約のことをいいます。

生前贈与も契約ですので、当事者双方の合意が必要になります。

つまり、贈与者はあげたと言う意思表示をし、受贈者はもらったという認識があることが重要です。

生前の贈与契約なので、相続とは関係ないのではないかと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、相続発生前3年以内の贈与も原則として相続税の課税対象となるため、これを忘れていると以下のような失敗をする可能性があります。

なお、令和6年1月1日以降の生前贈与から、この3年の期間が段階的に延長され、令和13年1月1日以降は相続開始前7年以内となります。

2 相続発生前一定期間内の贈与についての申告が漏れていた事例

被相続人が亡くなり、被相続人の家族は遺産の調査をしたところ基礎控除の範囲を超える相続財産があったため、相続税の申告と納税を行いました。

しかし、後日、税務署から連絡があり、追加で相続税を支払うよう求められました。

税務署によると、税務調査の結果、相続発生前の一定期間内に相続人に多額の贈与がされていた形跡があるが、この贈与金額が申告されていないとのことでした。

このようなケースだと、財産を少ないと見積もって申告したことになるため、「過少申告加算税」が課されてしまいます。

税務調査後の過少申告加算税の税額は、増えた分の差額×10%という計算式で求められます。

ただし、増えた分の差税額のうち、当初に申告した税金または50万円のうち大きい方の金額を超過する部分があるときには、その税率が15%になります。

3 相続税対策で暦年贈与をしたが税務署に否認されてしまった事例

贈与税は、贈与を受けた人(受贈者)に課税される税金です。

もっとも贈与があったからといって、すべてのケースで贈与税がかかるというわけではありません。

贈与税にも110万円の基礎控除というものがあり、その範囲内であれば課税対象になりません。

ただし、贈与額が110万円を超えた場合は、その超えた部分に課税されることになります。

贈与税の税率は、相続税の税率よりも高く設定されています。

また、一般税率と特例税率があります。

特例税率とは、直系尊属(親や祖父母)から18歳以上の子・孫への贈与に適用される税率です。

よくある失敗例が、贈与税がかからないように年間110万円以下の生前贈与をしていたのに、税務署から贈与と認められずに否認されてしまい、相続税を課されてしまうケースです。

父が、子に生前贈与をして遺産総額を減らし、相続税を軽くすることができると考えて、子と贈与契約を結ぶことなく、毎年決まった日に、子名義の口座に入金をしていた場合が典型例です。

また、贈与契約の事実があったとしても、受贈者がもらった財産を自分自身で管理しているかという、財産を管理している実態も重要になります。

父が子に贈与をしたのに、父が通帳や印鑑を管理しており、子はその口座のお金を1回も使ったことがない場合は、受贈者である子が財産管理をしていないと判断される可能性があるため注意が必要です。

仮に贈与契約をしたとしても、税務署からチェックが入った場合、証拠がなければ贈与を否認されてしまう可能性があります。

そのため、贈与契約をした証拠、受贈者が財産管理をしていた証拠などを収集しておくことも重要です。

また、親が暦年贈与の非課税枠の範囲内である110万円までであれば贈与税が課せられないという点に着目し、子に毎年110万円ずつ、10年かけて1100万円を贈与したとします。

毎年同じ時期に同じ金額を長期に渡って贈与をした場合では、税務署は、最初から1100万円を贈与する意図があったのではないかと考えることがあります。

そうすると、1100万円の贈与として贈与税が課せられる可能性があるため注意が必要です。

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