相続税を分割払いすることはできますか?
1 相続税の納付方法
相続税の納付は、申告と同様、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければならないとされています。
相続税の納付方法は、原則として現金一括払いであり、税務署、銀行、郵便局等で納めることになります。
しかし、例えば相続財産が不動産ばかりで現金が少ない場合など、被相続人の相続財産を取得して相続税を納付する必要がある方が、十分な現金を有していない場合もありえます。
このような場合には、相続税の分割払いができることもあります。
2 相続税が課されるケースは増えている
そもそも相続税の課税に関しては、平成27年1月1日以降、基礎控除額が減額されたため、以前は相続税が課されなかった相続にも相続税が発生するようになりました。
そして、もともと相続税が課される相続については、これまで以上の相続税が発生するようになりました。
また、土地の評価額は上昇傾向にあることもあわせて考えると、評価額が比較的高い東京等に土地を有している方にとっては、想像以上に高額な相続税が課されることもあります。
そのような場合、一括での支払いは難しいけれど、分割払いができれば、きちんと支払いをすることができるという方も中にはいらっしゃるかと思います。
3 相続税の延納
相続税の分割払いのことを、一般に「相続税の延納」といいます。
相続人は延納申請をすることができますが、以下の要件を満たしている必要があります。
1つ目の要件は、相続税額が10万円を超えることです。
2つ目の要件は、金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であることです。
3つ目の要件は、延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供することです。
ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
担保として提供できるものとして、例えば不動産や有価証券、自動車などがありますが、担保として提供するためには要件があります。
まず、①担保として提供できる財産の種類であることです。
担保として提供できるものは決められており、国債・地方債、社債、土地、建物等があります。
これらの中から、可能な限り処分が容易であり、価格の変動が少ないものを選択することになります。
次に、②担保として不適格な事由がないことも必要です。
売却できる見込みがないものや、法令上担保の設定または処分が禁止されているものは、担保として提供することができません。
さらに、③必要担保額を充足していることも必要です。
提供する担保の見積額が、延納税額と1回目の利子税の3倍を合わせたものより多いことが条件となります。
4つ目の要件は、延納申請に係る相続税の納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出することです。
参考リンク:国税庁・相続税の延納
気をつけなければならないのは、上記の4つの要件を一つでも満たせないと延納は認められないということです。
特に2つ目の要件については、税務署の判断に一定の裁量がありますので、延納の申請をしたとしても認められないということも考えられます。
4 税理士にご相談ください
相続税を現金で一括払いできない場合は、分割払い(延納)のほかにも物納等の納付の方法がありますが、延納や物納には厳しい要件が定められています。
相続税の納付についてお悩みの方は、当法人までお気軽にご相談ください。
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