信託を利用して相続税対策はできますか?
1 信託とは
信託とは、財産を持っている方(委託者)が、特定の人(受託者)に財産の管理・運用を委ね、財産の運用利益を特定の人(受益者)に与えるという仕組みのことを言います。
通常ですと、財産を持っている方が財産を管理・運用し、財産の運用利益を受け取ることとなります。
もっとも、一般的な心理として、自分で財産を管理・運用するのではなく、信用できる人に財産の管理・運用を委ねたいということがあるかと思います。
また、財産の運用利益については、他の人に与えたいということもあるかと思います。
このような場合に、信託を設定すれば、信用できる人に財産の管理・運用を委ね、かつ、他の人に財産の運用利益を与えることができることとなります。
この、財産の管理・運用の委託の仕方、財産の運用利益の与え方については、様々なバリエーションがあります。
この点を工夫することにより、様々な形態の信託を設定することができます。
2 信託と相続税対策
それでは、信託を利用することは相続税対策につながるのでしょうか。
結論としては、信託を利用することで、課税される相続税が大きく減額されることはなく、有効な相続税対策として利用できる場面はあまりありません。
信託を利用することにより、円滑に次世代に財産を引き継ぐことができ、相続税の納税資金対策になるという話がなされることもありますが、このような効果は遺言を適切に作成することによってももたらすことができますので、信託特有のメリットというわけではありません。
ただし、次のような仕組みを用いる場合には、信託を設定することが必須とされていますので、信託が相続税対策につながると言うことができます。
3 教育資金贈与
子や孫に教育資金としてまとまったお金を贈与することがあると思います。
このような場合、贈与されたお金が、子や孫がもらった教育費や生活費に関し、「通常必要と認められるもの」として扶養の枠にとどまるものであれば、贈与税が課税されることはありません。
しかし、贈与されたお金が多額の場合、子や孫の財産状況によっては、まとまったお金が扶養の枠を超えるものとされ、多額の贈与税が課税されることがあります。
このような場面で有効なのが、教育資金贈与です。
委託者が、信託銀行等で口座を設定し、子や孫を受益者として、口座の預貯金に信託を設定した場合には、1500万円まで贈与税が非課税とされます。
この制度を利用すれば、相続財産を減少させることができ、将来課税される相続税を減少させることができます。
上記の1500万円の非課税額は、贈与を受ける人1人当たりのものとなりますので、複数の子や孫のために信託を設定し、教育資金贈与を行えば、相続財産を大きく減少させることができます。
手続は金融機関の窓口で行い、親や祖父母は贈与した資金の管理契約を金融機関と締結し、子や孫名義の口座に一括で入金します。
また、受贈者である子や孫が30歳に達すると、教育資金口座にかかる契約は終了し、口座に残っていたお金は贈与税の対象となります。
また、契約期間中に贈与者である親や祖父母が死亡した場合、その時点の残額に対して相続税がかかることがあります。
ただし、一定期間で教育資金として使い切ることができなかった場合には贈与税が課税されることや、学習塾の費用については非課税額が500万円まで減少すること等、注意すべき点があります。
なお、教育資金口座の開設(契約)は、2023年3月31日までの期間限定となっていましたが、税制改正により2026年3月31日まで延長となりますので、期限にも注意が必要です。
4 相続税対策についてのご相談
このように、何が相続税対策になり、何が相続税対策にならないかについては、専門的な知識が必要となります。
正確な情報に基づき適切な対策を行うためには、信頼できる税理士の助言が必要不可欠です。
当法人は、東京にお住まいの方の相続税対策についてご相談をお受けしていますので、相続税対策についての疑問がありましたら、当法人までご相談ください。
養子縁組は相続税対策になりますか? 自分で相続税申告を行うと税務調査の対象になるのですか?